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☆こちらは鬼灯の冷徹の私設ファンサイトという名の二次創作サイトです。(まことに申し訳ありませんが性質上18歳未満の方は御遠慮ください)★原作者・出版社等とは一切無関係です。女性向け、腐った妄想垂れ流し注意です。☆取り扱いカプ→鬼灯×白澤、白澤×鬼灯
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「↑」みたいなセリフを言いながら出会い頭に拳一発する鬼灯さま下さい。ところで鬼灯さまのストライクゾーンって「動物全般(UMA含む)」「最初から言うことを聞く人なんて面白くもなんともない。矯正しがいのある人」らしいけどこれってつまり白澤のことなんじゃ。


「私の白澤がこんなに可愛いわけがない」








死んだように眠っている白澤を、鬼灯は飽きもせずただ眺めた。
会えば殴り合いが始まる男を黙って見守るなどもう二度とないのではないかと、記憶に焼き付けるようただただ眺めた。


――――


※鬼灯視点
「私の白澤がこんなに可愛いわけがない」


天国は桃源郷。
鬼灯が風光明媚な天界の一角に足を運ぶと、今日は普段と違う光景が広がっていた。
極楽満月の薬局内に火は灯らず、奥の神獣のねぐらには病人特有の酸っぱい臭いがたちこめる。

「……また飲み過ぎですかあなたは」
「ちが……う……」
「いや本当に違うんですよ鬼灯さん。白澤様は珍しくここ数日研究に没頭して、珍しく一歩も外には出ず……おまけに女性の訪れも珍しくなかったんですから」
「ちょ……桃タローくん、……ハアハア……珍しい言い過ぎ……」
「病人は黙ってください」
「げふっ」

これ以上死にかけの怨念のような声で合いの手をいれられると会話の邪魔なので(もちろん体力も消耗させてしまうので)強制的に黙らせてこざっぱりとした室内をあらためて見渡した。


異様と言えば異様に違いない。
この百万回殺したって地獄には堕ちない色魔が枕を抱えて身体を曲げて、もがれた金魚草のようにびちびちと痙攣していた。枕元にはくしゃくしゃに丸めた厚手のタオルが積んであるので、恐らく便所に起き上がる気力もなく吐いたのだろう。


しかも酒が原因でもないのだとおろおろと桃太郎が首を捻っている。

「桃太郎さん、何か他に思い当たることは。ほら、このまんじゅうを食べたとか」

と、サイドテーブルの上に置かれていた、どこかの土産ものらしい薄っぺらい木箱をひっくり返した。

「賞味期限が半世紀前の4月になってますよ」
「それ……先月おまえにもらったものだ……」
「あ、そうでしたっけ」

鬼灯は悪びれもせず箱をテーブルに戻す。
とはいえまんじゅうは開けた形跡がなかったのでこれが原因というわけでもないのだろう。
鬼灯にしてみればこのまま放置しておくのも寝覚めが悪い。


「薬は飲んだんですか」
「飲んでないよ……何が原因かわからないんだもん」

はっ、はっ、と浅く息をする様子は彼本来の獣の姿を思い出させる。
こういう時は下手なものを身体に入れると思いもよらぬ副作用が起きるのだということは同じく医療研究にも携わる鬼灯もわかっていた。

「仕方ない、私が見ているので桃太郎さんも少し休んでいてください」
「いえ、でも」
「この様子じゃ昨夜からこの馬鹿の看病であなたもろく寝てないんでしょ。あなたまで倒れたら原因がわかっても薬が作れなくなってしまう」
「桃タローくんいいよ。鬼灯のいうとおりにして」
「はあ、そうですか。わかりました……では何かあったら起こしてくださいよ」


桃太郎が出ていくと、鬼灯は机から椅子を引っ張り出してきて枕元に腰掛けた。

「絶対に病気になりそうにない人が珍しく病気になることを『鬼の霍乱』っていいますよね」
「鬼はおまえだ!」

大声を出したせいか白澤はひとしきり噎せると、苦しげに喘いで枕に沈んだ。


「冗談はともかく、まさに医者の不養生、病魔避けとあがめられてるあなたが病に伏せったとあればこの漢方医局の信用もガタ落ちだ」

そうなればこの薬師から金丹や薬の類を仕入れているこっちの信用にも関わるというものだ。大問題だ。すぐに対処しようと思ったが怒りの矛先である白澤は既に虫の息なのだ

「もう……その通りだよ……頼むから耳元でガンガンしゃべらないでくれ……頭が、われそ……」

女性をたぶらかす鈴のような玉虫声は、もはやその影もなく、舌先から言葉が浮いたように呂律が回っていない。熱もあるのだろうかと頬に手をやると、湯気が出る程熱く、大きく唾を嚥下する音がした。

「は、あ……つめ、た……きもち……い」
「はあ……仕方ないですね。少しお眠りなさい」

珍しく――女遊びも酒もやらない白澤よりもなお珍しく、
鬼灯は優しい声で白澤の目元を撫でた。


白澤はいつになく動揺し、何か言いたげに視線を滑らせたが、
指で瞳を覆われ次第にふわりと黄泉の夢路へと引き込まれていった。


死んだように眠る白澤を、鬼灯は飽きもせずただ眺めた。
もう二度とこのような機会に恵まれないのではないかと、記憶に焼き付けるようにただただ眺めた。

シーツと同じ色の頭巾からさらさらと覗く黒髪、
大振りの耳飾りを添えた形の良い耳たぶ。
熱のたまに苦しげによせられた眉と朱の隈取りが施された切れ長の目尻。
不本意ながら顔のパーツが似ているとよく言われるが、白澤のそれのほうが余程繊細に出来ているように思えた。

 

黙っていれば可愛いと認めるに吝かでないこともない、と思わないわけでもないような気がした。とはいえもしもこの神獣が最初から減らず口も叩かない人形のような性分だったとしたらこれほどつっかかることもなかっただろう。もっとも、矯正と調教の結果従順になるのならばあえて拒む理由もないが。

早く目が覚めればいい、そしてどれだけ悉に観察していたのか報告してやるのだ。きっとプライドの高い神獣は見る間に真っ赤になり怒り出し、また違った「可愛い」表情が見れる。


伏せた睫毛の本数を数え、朱の唇の起伏の形を覚えてしまうほど、時間があった。
身動きもせず、何もせず、ただ眺める。

 

 


――――――――

 

 

※白澤視点の続き
「僕の鬼灯がこんなに優しいわけがない」

 


「気分はどうですか」

天国らしい明るい優しい光に導かれ、目を覚ますと、常闇の鬼神が部屋の明かりを遮るように僕の顔を見下ろしていた。二三度ぱちぱちと瞬きをしても、それは変わらなかった。
身体のだるさも熱も変わらずだったが、眠ったおかげで体力は持ち直したようだった。

「サイアク、でも少しマシになった。つかおまえ、ずっとここにいたの?」
「ええ、あなたの間抜けな寝顔をかれこれ10時間ほど見てましたよ。おかげで何度顔にラクガキをしようと思ったことか」
「もうほんと最悪!」

鬼灯に寝顔を見られるなんて。よく無事に目を醒ませたかと思う。
こいつに表情を取り繕う必要は当然なく、不快を全面に押し出すと鬼灯は楽しそうに笑った。このドSめ。


「あー喉、乾いた」
「ちょっと待っていなさい」

独り言のつもりだったそれに鬼灯が反応したから怠さも忘れるほど腹のそこから驚いた。
いつのまにか枕元に陣取っていただけでも驚きなのに、わざわざ立ち上がり、水差しをテーブルからとり、寝たままでも飲みやすいように飲み口を傾け口元にあてがってくれた。


「熱はまだあるようですね、体力を戻すためにも何かお腹にいれたほうがいい。食べられますか」
「えーと……重湯とかなら」
「いいでしょう」

と再び鬼灯はあっさりと立ち上がり、しかも去り際額の汗も拭いてくれて、ずれた布団も掛け直してくれた。


本当に何があったのだろう。
これぞ鬼の「撹乱」ではないだろうか。鬼の霍乱は漢方の専門用語で本来は日射病をさすが、この場合は掻き乱す方の「かくらん」だ。主に僕の心が動揺で掻き乱されている。


実の所、「弱っている時くらい優しくしてやろう」的なサディストにありがちな飴と鞭の行動パターンではなく、アレの場合苦しんでのたうつ僕が見れたから――そして再び早くやりあいたいから――嬉しそうに何くれと世話をやいてくれるのだと僕は知っている。どうしようもない、真性のサディストだ。


パタンとしまったドアの向こうから「ああっ。鬼灯さん、そんなことは俺がやりますから」「いえいえ、かまいませんよ」と桃タローくんと鬼灯の声が聞こえてくる。本当に、珍しいこともあったものだ。心地良いざわめきを聞きながら再び眠りに落ちた。

 

 


 

――――


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